なまらなんくるないさ



■■■ 2020.4.9 ■■■

#1211 気がつけば


気がつけば、還暦が目の前です。
60歳といえば、昔は立派なお爺さんに見えましたが、
その年齢に近づいても、実感が湧きません。
皺が増えただけで、中身の進歩がないのです。
玉手箱を開けた浦島太郎は、一瞬で白髪の老人に変わりましたが、
自分の人生も、そのような感じがします。
お伽噺はよくできていて、いろいろな寓意を含んでいるようです。

ソメイヨシノが散り、花壇ではチューリップが満開になりました。
こちらにはお構いなく、季節と時間は進んでいます。


撮影地 : 東京都 練馬
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■■■ 2020.4.11 ■■■
#1212 アレンジメント

御霊前にお供えをする、アレンジメントをいただきました。
美しい花があると、仏壇が引き締まります。

全体のイメージは、ごく薄いクリーム色で纏められています。
このような場合は、白が基調になるのかと思いましたが、
もしかすると、それでは冷た過ぎるのかもしれません。

レースのカーテンでデフューズされた、窓際の光です。
完全な逆光ということで、かなりのプラス補正をするために、
絞り気味で写しても、背景がシンプルになりました。


 撮影地 : 東京都 練馬
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■■■ 2020.4.13 ■■■
#1213 突然に

5分で燃え尽きる、短いローソクを買いました。
お線香にも、ハーフサイズというものがあるようです。
立てると危ないので、寝かせて使うための器も手に入れました。
横置きにするのは浄土真宗で、我が家の宗派とは違うのですが、
そのほうが安全そうなので、よいものは取り入れてしまいます。

仏壇にアレンジメントを置いて、2時間ほどした時に、
瓶に挿してあるチューリップが、ぽきんと折れました。
萎れ始めてはいましたが、あまりにも突然です。
新しい花が届き、自分の役目は終えたと感じたのかもしれません。


 撮影地 : 東京都 練馬
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■■■ 2020.4.15 ■■■
#1214 覚えていないカット

この数年は、宿泊を伴う旅はできていませんが、
たまに日帰りで、あちらこちらへと足を運んでいました。
しかし、外出自粛要請が出ると、
自分の撮影などは、不要不急の最たるものなので、
家にいてぼんやりと、かつての写真を見直す日々です。

写したカットはすべて記憶にある、と胸を張りたいものの、
脳味噌のメモリーの劣化もあり、残念ながらそうではありません。
三脚を立てて写していた頃のものは、それなりに頭の片隅にあるものの、
すべて手持ちで撮る最近は、覚えていないシーンが多いのです。


 撮影地 : 神奈川県 森戸海岸
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■■■ 2020.4.17 ■■■
#1215 カラーフィルムへの旅

いまだに引越しの作業をしていて、ようやくカラーフィルムを持ち帰りました。
6コマのスリーブ状態のモノクロとは違い、セレクトをした写真はカットをしてあります。
ひとコマずつマウントされたリバーサルをスキャンするのは、実にひさしぶりでしたが、
やり方を覚えていたということは、悲観するほどには頭は劣化をしていないようです。

この時の感度は100なので、揺れている車内では微妙にブレました。
負け惜しみのように聞こえますが、それで柔らかな雰囲気が出せたような気がします。

現世のことを書いていると、なかなか落ち着かないので、
次回からしばらくは、その昔の北海道の旅にお連れしたいと思います。


 撮影地 : 山梨県 三つ峠
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■■■ 2020.4.18 ■■■
#1216 カラーフィルムで冬の旅~名寄

急行利尻は、札幌と稚内を結んでいたブルートレインです。
途中の名寄では長い停車時間があり、ホームに降りてみると、
テールマークと赤いランプが、闇の中で綺麗に輝いていました。

スタジオで使うタングステンフィルムで撮れば、青が強調されるだろうと考えて、
翌年の冬にコダックのEPYを持ち、再び同じ場所で写してみました。

デジタル時代の現在では、後から色を変えることができますが、
当時は撮影の現場で、ほぼすべてを完結させなければならないために、
シャッターを切る瞬間は、いまよりも厳しい顔をしていたと思います。


 撮影地 : 北海道 名寄
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■■■ 2020.4.21 ■■■
#1217 カラーフィルムで冬の旅~上砂川

愛用のフィルムは、超微粒子でビビッドなRVPでした。
最近は目が霞んできたために、柔らかい発色が好みですが、
無意味に元気な若い頃は、派手なものを求めていた気がします。

カラーで撮る時は、ほとんどの場合で三脚を立てていましたが、
猫が動くといけないので、ここでは50mmを手持ちで写します。
公称感度は50ですが、実効値はさらに低い40しかないので、
このくらい明るくても、f5.6で60分の1秒のシャッターしか切れません。
できればもうひとつ絞りたいところですが、手ぶれ補正がない時代のため、
仔犬のようにプルプルと震えている自分には、これが限界でした。


 撮影地 : 北海道 上砂川
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■■■ 2020.4.23 ■■■
#1218 カラーフィルムで冬の旅~美馬牛

美瑛や美馬牛の丘は、いまは超人気の観光地ですが、
自分が若い頃は、日本人がそこそこいる程度で、
海外からの観光客が押し寄せるような光景は、まだ見られませんでした。
寒さが厳しい季節には、他のカメラマンに出会うこともなくて、
ひとりで歩きながら、のんびりと撮影をしていました。

真冬の北海道では、氷点下20度を下回ることもあります。
厚めの手袋をしていると、カメラの操作がしにくいので、
つい外して、そのまま三脚を掴んでしまうと、
接着剤でつけたように、手が金属にぴたりと貼りつくのでした。


 撮影地 : 北海道 美馬牛
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■■■ 2020.4.24 ■■■
#1219 カラーフィルムで冬の旅~音威子府

音威子府駅で降りて、ぶらりとしてみましたが、
吹雪ということもあり、誰にも出会いません。
その当時でも、人口が2000人くらいのちいさな村で、
現在では、800人を切るようです。
有名な蕎麦の話は、北海道独歩抄で書きました。

雪の反射があるためか、曇りでもそこそこ明るくて、
125分の1秒のシャッターが切れるので、手持ちで撮影をしました。
そのためか、なんとなく画面が傾きましたが、
これはこれで、歩いている感じが出たような気がします。


 撮影地 : 北海道 音威子府
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■■■ 2020.4.26 ■■■
#1220 カラーフィルムで冬の旅~天塩

大雪の峠は越えて、羽幌線の運行は再開されたものの、
先を走るラッセル車が、除雪をしているために、
途中の駅で長時間の停車をしながら、のろのろとしか進みません。

その日は、宗谷本線で稚内まで向かう予定でした。
大幅に遅れたので、接続には間に合わないと諦めていたものの、
車掌さんが気を利かせて、乗り継ぎの乗客がいることを連絡してくれて、
幌延駅に着くと、最終列車が出発せずにいてくれました。
車内にはあとひとり、同じように写真を撮りながら旅をしている人がいるだけで、
ふたりのために長いこと待たせてしまい、申し訳ない気持ちでした。


 撮影地 : 北海道 天塩
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